top of page

四半期配当はなぜ増えない?会社法上の仕組みと違法配当リスクを公認会計士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 2 日前
  • 読了時間: 10分

こんにちは!代表の安田です。


上場会社の株主還元策として、配当は非常に重要なテーマです。

日本企業では、期末配当と中間配当を組み合わせた年2回配当が一般的です。一方で、海外企業では四半期ごとに配当を行なう会社も多く、日本でも「四半期配当」を導入することは制度上可能です。


しかし、日本国内では四半期配当を実施する会社はそれほど多くありません。

株主にとっては、年1回や年2回よりも、年4回配当を受け取れる方が魅力的に見えるかもしれません。企業にとっても、安定株主の確保や株主還元姿勢のアピールにつながる可能性があります。


それにもかかわらず、なぜ四半期配当は広がっていないのでしょうか。

本日は、四半期配当の基本、会社法上の仕組み、導入が進まない理由、分配可能額を超える違法配当リスク、実務上の注意点について、公認会計士の視点からわかりやすく解説します。


四半期配当とは

四半期配当とは、1事業年度を4つの期間に分け、四半期ごとに剰余金の配当を行う制度です。


一般的な日本企業では、期末配当を中心に、中間配当を加えた年1回または年2回の配当が多く見られます。これに対して、四半期配当では、3か月ごとに配当を行なうことになります。


たとえば、3月決算会社であれば、第1四半期、第2四半期、第3四半期、期末のタイミングで配当を行うイメージです。


株主から見ると、配当を受け取る頻度が増えるため、定期的なインカムゲインを得やすくなります。企業から見ても、株主還元に積極的な姿勢を示しやすく、長期保有を促す効果が期待されます。


しかし、四半期配当は単に「配当回数を増やすだけ」の制度ではありません。実施するには、会社法上の手続、定款の整備、分配可能額の確認、資金繰り管理、投資家への説明など、多くの実務対応が必要になります。


四半期配当は会社法上可能

四半期配当は、会社法上、一定の要件を満たせば実施可能です。


会社法では、剰余金の配当について定められており、株主総会決議によって配当を行なうことが基本です。また、一定の会社では、定款に定めることにより、剰余金の配当等を取締役会で決定できる仕組みも認められています。


この仕組みを利用すれば、会社は年1回や年2回に限らず、四半期ごとに配当を行なうことも可能になります。


もっとも、会社が自由にいつでも配当できるわけではありません。配当には、分配可能額という上限があります。これは、債権者保護の観点から、会社財産を過度に株主へ流出させないためのルールです。


そのため、四半期配当を実施する会社は、各配当時点で分配可能額を正確に計算し、その範囲内で配当を行う必要があります。


四半期配当が期待される理由

四半期配当には、いくつかのメリットがあります。


まず、株主還元の機会が増える点です。株主は年4回配当を受け取ることができるため、安定的な収入を重視する投資家にとって魅力的に映る可能性があります。


次に、長期保有株主の確保につながる可能性があります。定期的に配当を受け取れることで、短期売買ではなく、継続保有を選ぶ投資家が増えることも考えられます。


また、企業にとっては、株主還元に積極的であることを市場に示すメッセージにもなります。業績が安定している会社であれば、四半期配当を通じて、安定したキャッシュ・フローや財務基盤をアピールできる場合があります。


さらに、投資家とのコミュニケーションの頻度が高まる点もあります。四半期決算とあわせて配当方針を説明することで、経営成績と株主還元の関係をよりタイムリーに伝えることができます。


それでも四半期配当が増えない理由

四半期配当にはメリットがある一方で、日本企業では導入が大きく広がっていません。


その理由の一つは、手続面の負担です。

四半期配当を行なうには、定款の整備が必要になる場合があります。取締役会で配当を決定できるようにするには、会社法上の要件を確認し、定款に必要な定めを置く必要があります。定款変更には株主総会決議が必要となるため、制度導入には一定の準備が必要です。

次に、期中に配当判断を行う難しさがあります。


期末配当であれば、1年間の業績や財政状態を踏まえて配当額を決定できます。しかし、四半期配当では、事業年度の途中で何度も配当判断を行うことになります。


第1四半期や第2四半期の時点では、その後の業績がどうなるかまだ不透明です。特に、景気変動、為替変動、原材料価格の高騰、取引先の状況などに影響を受けやすい会社では、期中に安定した配当判断を行なうことが難しくなります。


また、一度四半期配当を始めると、投資家から継続的な実施を期待される可能性があります。業績悪化により減配や無配となった場合、市場からネガティブに受け止められるおそれもあります。


分配可能額を超える違法配当リスク

四半期配当で特に注意すべきなのが、分配可能額を超える違法配当リスクです。


会社は、剰余金の配当を行なう場合、会社法上の分配可能額の範囲内で行わなければなりません。分配可能額とは、簡単にいえば、会社が株主に分配してもよい上限額です。会社の純資産、剰余金、自己株式、その他の調整項目などを踏まえて計算されます。

四半期配当では、配当を行う回数が増えるため、その都度、分配可能額を確認する必要があります。


ここで問題となるのは、期中の業績悪化です。

たとえば、第1四半期時点では十分な分配可能額があると判断して配当を行ったものの、その後に大きな損失が発生した場合、次の配当判断が難しくなります。また、計算を誤って分配可能額を超える配当を行ってしまうと、違法配当となる可能性があります。


違法配当が発生した場合、会社だけでなく、取締役などの責任が問題になることがあります。株主還元のつもりで行った配当が、結果として会社法上の重大な問題につながる可能性があるため、慎重な対応が必要です。


四半期配当と資金繰りの関係

四半期配当を検討する際には、会計上の分配可能額だけでなく、実際の資金繰りも重要です。


分配可能額があるからといって、必ずしも現金に余裕があるとは限りません。売上は計上されていても入金が遅れている場合や、設備投資・借入返済・税金支払いなどで資金需要が大きい場合には、配当によって手元資金が不足する可能性があります。


特に四半期配当では、年4回の資金流出が発生します。

そのため、短期的な資金繰り表、中期的なキャッシュ・フロー計画、借入契約上の財務制限条項、設備投資計画などを踏まえて、配当可能性を判断する必要があります。


配当は株主還元として重要ですが、会社の継続的な成長投資や財務安全性を損なうようでは本末転倒です。


投資家側も四半期配当を強く求めていない可能性

四半期配当が増えない理由として、企業側だけでなく、投資家側のニーズも考える必要があります。


もちろん、配当収入を重視する投資家にとって、四半期配当は魅力的です。しかし、日本の投資家全体が四半期配当を強く求めているかというと、必ずしもそうとは限りません。

投資家が重視するのは、配当の回数だけではありません。


むしろ、配当総額、配当性向、累進配当方針、DOE、自己株式取得、成長投資とのバランス、資本効率などを総合的に見ています。


年4回配当であっても、総額が少なかったり、業績悪化時に不安定になったりするのであれば、投資家にとって必ずしも魅力的とはいえません。


一方、年2回配当であっても、安定的な増配方針や明確な株主還元方針が示されていれば、投資家から評価されることがあります。


つまり、四半期配当は株主還元策の一つではありますが、それ自体が企業価値向上の決め手になるわけではありません。


四半期配当を導入する場合の実務ポイント

四半期配当を導入する場合、会社は次のような点を確認する必要があります。


まず、定款の確認です。取締役会で剰余金の配当を決定できる定款規定があるか、会社法上の要件を満たしているかを確認します。必要に応じて、株主総会で定款変更を行う必要があります。


次に、分配可能額の計算体制です。四半期ごとに配当を行う場合、各時点で正確に分配可能額を算定できる体制が必要です。経理部門だけでなく、法務部門、財務部門、監査人との連携も重要になります。


また、業績予想と資金繰りの管理も欠かせません。期中に配当を行った後、業績が悪化した場合でも財務の安全性を維持できるかを検討する必要があります。


さらに、投資家への説明も重要です。なぜ四半期配当を導入するのか、年間配当方針はどうなるのか、業績変動時にはどのように対応するのかを明確に説明する必要があります。


中小企業にも関係するのか

四半期配当は、主に上場会社で話題になる制度です。


しかし、中小企業や非上場会社にとっても、配当実務の基本を理解することは重要です。

非上場会社では、毎期の利益が出た場合に役員株主へ配当を行うことがあります。また、事業承継や相続対策、少数株主対策、グループ会社間の資金移動などの文脈で、剰余金の配当が検討されることもあります。


この場合でも、会社法上の分配可能額を超える配当は認められません。

特に、非上場会社では、税務上の利益や現金残高だけを見て配当を判断してしまうケースがあります。しかし、配当は会社法上の手続と分配可能額の制限を受けます。


四半期配当を行なうかどうかにかかわらず、配当を実施する会社は、決議手続、分配可能額、純資産額、資金繰りを確認する必要があります。


違法配当を防ぐためのチェックポイント

違法配当を防ぐためには、配当前に次の点を確認することが重要です。

  • 定款上、配当決定機関に関する定めが整備されているか

  • 株主総会または取締役会の決議手続が適切か

  • 分配可能額を正確に計算しているか

  • 自己株式や準備金などの調整項目を反映しているか

  • 直近の業績悪化や多額の損失を考慮しているか

  • 配当後の純資産額が会社法上の要件を満たすか

  • 配当後の資金繰りに問題がないか

  • 監査人、税理士、弁護士など専門家に確認しているか


特に、四半期配当では、これらの確認を年4回行なう必要があります。配当頻度が増えれば、それだけ実務負担とミスのリスクも高まります。


四半期配当より重要なのは株主還元方針の明確化

四半期配当は、株主還元策として一定の魅力があります。

しかし、企業にとって本当に重要なのは、配当回数そのものではなく、株主還元方針を明確にすることです。


たとえば、次のような方針を投資家に説明することが考えられます。

  • 安定配当を重視するのか

  • 業績連動配当を重視するのか

  • 配当性向の目標を設けるのか

  • DOEを指標にするのか

  • 自己株式取得と配当をどう組み合わせるのか

  • 成長投資と株主還元のバランスをどう考えるのか


投資家は、配当回数だけでなく、企業がどのような資本政策を持っているかを見ています。

四半期配当を導入する場合でも、単に配当頻度を増やすだけではなく、長期的な資本政策の中でどのような意味を持つのかを整理する必要があります。


まとめ

四半期配当とは、四半期ごとに剰余金の配当を行う制度です。会社法上、一定の要件を満たせば実施することができます。


株主にとっては配当を受け取る頻度が増えるため、魅力的な制度に見えます。企業にとっても、株主還元に積極的な姿勢を示し、安定株主の確保につながる可能性があります。


しかし、日本企業では四半期配当はそれほど普及していません。その背景には、定款変更などの手続負担、期中の配当判断の難しさ、業績悪化時の無配リスク、そして分配可能額を超える違法配当リスクがあります。


特に重要なのは、配当は会社法上の分配可能額の範囲内で行なわなければならないという点です。四半期配当では配当回数が増えるため、その都度、分配可能額と資金繰りを確認する必要があります。


また、四半期配当を行なうこと自体が企業価値を高めるわけではありません。投資家が重視するのは、配当の頻度だけでなく、株主還元方針の一貫性、配当総額、成長投資とのバランス、資本効率です。


四半期配当を導入する場合には、会社法上の手続、定款、分配可能額、資金繰り、投資家への説明を十分に整理することが大切です。配当政策を見直す際には、公認会計士、税理士、弁護士などの専門家に相談し、自社に合った株主還元方針を設計することをおすすめします。


神戸の税理士事務所ロゴ

コメント


bottom of page