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役員給与はなぜ損金不算入になる?法人税の基本ルールと「役員の範囲」を税理士が解説

執筆者の写真: 安田亮
安田亮
8月15日
読了時間: 16分

更新日:9月1日

おはようございます!代表の安田です。


会社が役員に支払う報酬、賞与、退職慰労金は、会計上は費用として処理されます。

しかし、法人税の世界では、会計上の費用だからといって、必ずしも全額が損金に算入されるわけではありません。


特に中小企業や同族会社では、役員給与の決め方を誤ると、法人税の申告で損金不算入となり、思わぬ税負担が生じることがあります。


役員給与の損金不算入額は、法人税申告書上、加算調整されます。

しかも、多くの場合は「社外流出」として扱われるため、翌期以降に取り戻すことができません。


減価償却超過額のように、将来のどこかで減算できるものとは違います。

そのため、役員給与は、会社の節税や資金繰りだけでなく、税務調査でも非常に重要な論点です。


本日は、法人税における役員給与の基本的な取扱い、損金算入できる役員給与の種類、損金不算入となるケース、そして法人税法上の「役員」の範囲について、会計事務所を運営する税理士の視点から解説します。


役員給与は会計と税務で扱いが違う

役員に対する給与には、毎月の役員報酬、役員賞与、退職慰労金などがあります。


会計上は、これらは発生した期間の費用として処理されます。

たとえば、代表取締役に毎月100万円の役員報酬を支給した場合、会計上は毎月100万円を役員報酬として費用処理します。


しかし、法人税では別のチェックが入ります。

役員は会社の意思決定に大きな影響を持つ立場です。

特にオーナー会社では、代表者や親族役員が自らの報酬額を実質的に決められることも多く、利益調整に使われるおそれがあります。


そこで法人税法では、役員給与について、損金算入できるものを一定の類型に限定しています。つまり、役員給与は「払ったから損金」ではなく、「法人税法上の要件を満たしたから損金」と考える必要があります。


役員給与の損金不算入は社外流出項目

法人税の所得金額は、会計上の利益を出発点として、税務上の加算・減算を行って計算します。


加算調整には、大きく分けて「留保」と「社外流出」があります。

留保項目は、たとえば減価償却超過額のように、将来の事業年度で減算できる可能性があります。


一方、社外流出項目は、会社の外に流出したものとして扱われ、将来取り戻すことができません。


役員給与の損金不算入額は、この社外流出項目に該当します。

つまり、役員給与が損金不算入になると、その期の法人税負担が増えるだけでなく、将来の期で取り戻すこともできません。


役員個人には給与所得として課税され、会社側では損金にならないという、非常に痛い結果になり得ます。


このため、役員給与は支給前の設計が重要です。


法人税における役員給与の全体像

法人税における役員給与の取扱いは、大きく次のように整理できます。


まず、隠蔽・仮装により支給された役員給与は損金不算入です。

次に、通常の役員給与については、定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与のいずれかに該当する必要があります。


次に、これらに該当しても、不相当に高額な部分の金額は過大役員給与として損金不算入になります。


また、役員退職給与や使用人兼務役員の使用人分給与についても、不相当に高額な部分は損金不算入です。


このように、役員給与は一つの要件だけで判断するのではありません。

支給の経緯、支給形態、金額の相当性、対象者が役員に該当するかどうかを順番に確認する必要があります。


定期同額給与とは

定期同額給与とは、役員に対して1か月以下の一定期間ごとに支給する給与で、その事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものをいいます。


中小企業で最も一般的な役員報酬は、この定期同額給与です。

たとえば、3月決算法人が4月から翌年3月まで、代表取締役に毎月100万円を支給する場合、基本的には定期同額給与に該当します。


ただし、期中に自由に増額・減額すると、定期同額給与に該当しない部分が生じる可能性があります。役員報酬を改定する場合は、原則として事業年度開始の日から3か月以内に行う通常改定が基本です。


また、役員の職務内容に重大な変更があった場合や、会社の経営状況が著しく悪化してやむを得ず減額する場合など、一定の事由がある場合には、期中改定でも定期同額給与として認められることがあります。


事前確定届出給与とは

事前確定届出給与とは、役員に対して、あらかじめ定めた時期に、あらかじめ確定した金額を支給する給与です。


分かりやすくいえば、役員賞与を損金算入するための制度です。

役員に賞与を支給する場合、通常の従業員賞与のように、利益や業績を見て後から金額を決めると、原則として損金算入できません。


しかし、事前に支給時期と支給額を定め、期限内に税務署へ届出を行い、届出どおりに支給すれば、損金算入が認められる場合があります。


たとえば、6月と12月にそれぞれ300万円ずつ役員賞与を支給することを事前に定め、届出どおりに支給するようなケースです。


注意点は、届出と異なる時期・金額で支給すると、損金算入が認められないリスクがあることです。「少しだけ増やす」「資金繰りの都合で支給日をずらす」といった変更も問題になることがあります。


業績連動給与とは

業績連動給与とは、会社の業績を示す一定の指標を基礎として金額が算定される役員給与です。


たとえば、利益や株価などに連動して支給額が決まる報酬です。

ただし、業績連動給与を損金算入するためには、報酬委員会の決定、有価証券報告書等による開示、市場価格のある株式等の要件など、厳格な要件があります。


そのため、実務上は主に上場会社やその100%子会社を想定した制度です。

一般的な中小企業が業績連動給与を使って役員報酬を損金算入することは、かなり難しいと考えてよいでしょう。


中小企業では、基本的には定期同額給与と事前確定届出給与を中心に検討します。


支給形態を満たしても高すぎる部分は損金不算入

役員給与についてよくある誤解が、「毎月同額なら全額損金になる」というものです。

確かに、毎月同額で支給していれば、定期同額給与の要件は満たしやすくなります。

しかし、それだけでは十分ではありません。


定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与のいずれかに該当する役員給与であっても、不相当に高額な部分の金額は損金不算入になります。


たとえば、役員報酬として年間9,000万円を定期同額給与として支給していた場合でも、その役員の職務内容や会社の規模から見て相当額が6,000万円と判断されれば、差額の3,000万円は過大役員給与として損金不算入になります。


つまり、役員給与は「支給形態」と「金額の相当性」の両方を確認する必要があります。


役員退職給与も高すぎる部分は損金不算入

役員退職給与についても、不相当に高額な部分は損金不算入です。


役員退職金は金額が大きくなりやすいため、税務調査でも確認されやすい項目です。

たとえば、役員退職給与として1億円を支給した場合でも、その役員の在任年数、功績、退職時の報酬月額、会社規模などから見て相当額が8,000万円と判断されれば、差額2,000万円は損金不算入になります。


役員退職金を支給する際は、功績倍率法などにより合理的な計算根拠を残しておくことが重要です。


使用人兼務役員の使用人分給与

役員給与の取扱いでは、使用人兼務役員の使用人分給与も重要です。


使用人兼務役員とは、役員でありながら、部長、課長、工場長など、使用人としての職制上の地位を有し、常時使用人としての職務にも従事している人をいいます。


たとえば、取締役営業部長、取締役工場長などです。

使用人兼務役員の使用人分給与については、一定の場合、通常の役員給与の支給形態規制の対象から除かれます。


ただし、不相当に高額な部分の金額は損金不算入になります。

また、使用人兼務役員に該当するかどうかは、法人税法上の役員の範囲とも関係します。

特に同族会社では、株式所有割合によって使用人兼務役員に該当しない場合があるため注意が必要です。


法人税法上の役員の範囲

法人税法上の役員には、会社法等の法令上の役員と、法人税法上役員とみなされる者が含まれます。まず、会社法等の法令上の役員には、取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事、清算人などが含まれます。


これらは、法人税法上も当然に役員です。

一方、これらに該当しない人でも、実質的に法人の経営に従事している場合には、法人税法上の役員とされることがあります。


これが「みなし役員」です。

役員給与の損金算入規制は、登記された取締役だけを対象にしているわけではありません。

実質的に経営に関与している人への給与も、役員給与として扱われる可能性があります。


みなし役員とは

みなし役員には、大きく2つの類型があります。


1つ目は、法人の使用人以外の者で、その法人の経営に従事しているものです。

たとえば、相談役、顧問、会長、理事長などの肩書で、実質的に経営判断に関与している人です。

会社法上の取締役ではなくても、法人内での地位や職務内容から見て、他の役員と同様に実質的に経営に従事していると認められる場合には、法人税法上の役員とされます。


2つ目は、同族会社の使用人のうち、株式等の所有割合が一定以上で、その会社の経営に従事しているものです。

こちらは、形式上は使用人であっても、株主としての支配力と経営関与があるため、法人税法上は役員として扱われるものです。


執行役員は役員になるのか

実務でよく質問を受けるのが、執行役員です。


執行役員という名称は、会社法上の「執行役」と似ています。

しかし、多くの会社で使われている執行役員制度は、法令に基づく役員制度ではなく、会社が任意に設けている役職です。したがって、取締役を兼ねていない執行役員は、ただちに会社法上の役員になるわけではありません。


ただし、だからといって必ず法人税法上も使用人として扱われるとは限りません。

その会社における執行役員の地位が、職制上の使用人としての地位とはいえず、実質的に経営に従事していると認められる場合には、みなし役員とされる可能性があります。

肩書ではなく、実際の権限、職務内容、経営会議への参加状況、重要事項への関与などを確認する必要があります。


相談役・顧問も役員になることがある

退任後の創業者や前代表者が、相談役や顧問として会社に残るケースがあります。


この場合も、単に相談役や顧問という肩書だけで役員になるわけではありません。

しかし、実質的に会社の経営に関与している場合には、法人税法上の役員とされる可能性があります。たとえば、次のような場合です。

  • 重要な経営判断に参加している

  • 金融機関や主要取引先との交渉を行っている

  • 役員会議で実質的な発言力を持っている

  • 代表取締役や取締役に指示を出している

  • 人事や投資判断に関与している


このような場合、相談役や顧問への報酬は、役員給与として法人税法上の規制を受ける可能性があります。


一方、単に技術指導や営業助言を限定的に行なっているだけで、経営判断に関与していない場合には、役員に該当しないこともあります。

実態の整理が重要です。


同族会社とは

みなし役員の判定では、同族会社かどうかも重要です。


同族会社とは、簡単にいうと、少数の株主グループによって支配されている会社です。

法人税法では、上位3位以内の株主グループの所有割合の合計が50%を超える会社が同族会社とされます。


ここでいう株主グループには、本人だけでなく、親族など特殊関係者も含めて判定します。

たとえば、社長、社長の配偶者、子、親族が株式を保有している場合、それらは同じ株主グループとして扱われることがあります。


中小企業の多くは、同族会社に該当します。

そのため、同族会社の使用人がみなし役員になるかどうかは、実務上とても重要です。


同族会社の使用人がみなし役員になる要件

同族会社の使用人が法人税法上の役員とされるには、一定の所有割合要件を満たし、かつ会社の経営に従事している必要があります。

要件は大きく3つあります。


まず、その使用人が、支配力のある株主グループに属していることです。

具体的には、株主グループを所有割合の大きい順に加算し、50%を超えるまでに含まれる株主グループに属しているかを見ます。


次に、その使用人の属する株主グループの所有割合が10%を超えていることです。


さらに、その使用人本人、配偶者、これらの者が50%超を所有する他の会社の所有割合を合計して5%を超えていることです。


これらを満たし、かつ経営に従事している場合、その人は形式上使用人であっても、法人税法上は役員とされます。


経営に従事しているかが重要

みなし役員の判定では、株式所有割合だけでなく、経営に従事しているかどうかが重要です。経営に従事しているかどうかについて、法令や通達に細かな数値基準があるわけではありません。


実務上は、会社の事業運営上の重要事項に参画しているかどうかを見ます。

たとえば、次のような行為がある場合は注意が必要です。

  • 経営方針を決定している。

  • 資金調達や金融機関対応に関与している

  • 主要取引先との契約交渉に関与している

  • 重要な人事を決定している

  • 設備投資や新規事業の判断に関与している

  • 役員会議や経営会議で重要な発言をしている


単に現場業務を担当しているだけであれば、経営に従事しているとは限りません。

しかし、株式所有割合が高く、実質的に経営判断に関与している場合には、使用人ではなく役員として扱われる可能性があります。


みなし役員になると何が変わるか

みなし役員に該当すると、その人に支給する給与は、法人税上、役員給与の規制を受けます。


これは実務上かなり大きな違いです。

たとえば、使用人だと思って賞与を支給していた場合でも、みなし役員に該当すると、その賞与は役員給与として扱われます。


役員賞与を損金算入するには、原則として事前確定届出給与などの要件を満たす必要があります。届出をしていなければ、損金不算入となる可能性があります。


また、毎月の給与についても、定期同額給与に該当するかどうかが問題になります。

使用人であれば柔軟に昇給や賞与支給ができる場面でも、役員に該当すると法人税上の制限を受けるのです。


同族会社では、親族従業員や後継者候補に給与・賞与を支給する際、みなし役員判定を必ず確認すべきです。


役員給与の実務でまず確認すべき順番

役員給与の税務処理では、次の順番で確認すると整理しやすくなります。


まず、支給対象者が法人税法上の役員に該当するかを確認します。

登記上の取締役や監査役だけでなく、みなし役員に該当しないかも確認します。


次に、支給する給与がどの類型に該当するかを確認します。

毎月の報酬なら定期同額給与、賞与なら事前確定届出給与、上場会社等の業績連動報酬なら業績連動給与を検討します。


そのうえで、不相当に高額な部分がないかを確認します。

最後に、株主総会議事録、取締役会議事録、届出書、職務内容資料など、税務調査で説明できる資料を整備します。


役員給与は、支給後に慌てて対応しても間に合わないことが多い項目です。

支給前に設計しておくことが大切です。


中小企業でよくあるミス

中小企業では、役員給与について次のようなミスがよく見られます。

  • 期中に役員報酬を自由に増減している

  • 役員賞与を事前確定届出なしで支給している

  • 親族従業員がみなし役員に該当するか確認していない

  • 相談役や顧問への報酬を使用人給与のように処理している

  • 株主総会議事録や取締役会議事録を作成していない

  • 役員報酬の改定理由が記録されていない

  • 役員退職金の計算根拠を残していない

  • 過大役員給与の検討をしていない


これらのミスは、税務調査で損金不算入を指摘される原因になります。

特に、役員賞与と親族従業員の給与は要注意です。


税務調査で確認されやすいポイント

役員給与について、税務調査では次のような資料や事実関係が確認されます。

  • 役員名簿

  • 登記事項証明書

  • 株主名簿

  • 親族関係

  • 同族会社判定

  • 職務分掌表

  • 組織図

  • 役員報酬の決定議事録

  • 定時株主総会議事録

  • 取締役会議事録

  • 事前確定届出給与の届出書

  • 給与台帳

  • 賞与支給明細

  • 役員退職金の計算資料

  • 相談役・顧問の職務内容

  • 親族従業員の業務実態


これらの資料が不足していると、会社側の説明が弱くなります。

役員給与は金額が大きくなりやすいため、否認された場合の税額影響も大きくなります。


実務上のチェックポイント

役員給与を支給する際は、次の点を確認しましょう。

  • 支給対象者は法人税法上の役員か

  • みなし役員に該当する可能性はないか

  • 同族会社の使用人について所有割合を確認したか

  • 経営に従事している親族従業員はいないか

  • 毎月の報酬は定期同額給与に該当するか

  • 役員賞与は事前確定届出給与として届出しているか

  • 業績連動給与を使える会社か

  • 役員退職金の相当額を検討しているか

  • 過大役員給与に該当しないか

  • 株主総会議事録や取締役会議事録を作成しているか

  • 職務内容や支給根拠を説明できるか


このチェックを行なうだけでも、役員給与の税務リスクはかなり下げられます。


まとめ

法人税における役員給与は、会計上費用であっても、税務上は一定の要件を満たさなければ損金算入できません。


役員給与の損金不算入額は、将来取り戻せない社外流出項目になるため、会社の税負担に大きく影響します。


役員給与を損金算入するためには、まず定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与のいずれかに該当するかを確認します。


中小企業では、毎月同額で支給する定期同額給与と、事前に届出を行う事前確定届出給与が中心になります。


ただし、これらの支給形態要件を満たしていても、不相当に高額な部分の金額は過大役員給与として損金不算入になります。


また、役員退職給与や使用人兼務役員の使用人分給与についても、高すぎる部分は損金になりません。


さらに、役員給与の規制対象となる「役員」は、会社法上の取締役や監査役だけではありません。


相談役、顧問、執行役員、同族会社の親族従業員などでも、実質的に経営に従事している場合には、法人税法上の役員、つまりみなし役員に該当することがあります。


みなし役員に該当すると、使用人給与として処理していた賞与や報酬が、役員給与として損金算入制限を受ける可能性があります。


役員給与の実務では、支給対象者が役員に該当するか、支給形態が要件を満たすか、金額が相当か、議事録や届出書が整っているかをセットで確認することが重要です。


役員報酬、役員賞与、役員退職金、親族従業員への給与で迷う場合は、支給前に税理士へ相談することをおすすめします。



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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

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