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定期同額給与はどこまで認められる?役員報酬を変更するときの注意点を税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田亮
    安田亮
  • 11 分前
  • 読了時間: 11分

おはようございます!代表の安田です。


会社の利益状況や役員の働き方が変わると、役員報酬を増額・減額したい場面があります。

たとえば、次のようなケースです。

  • 社長の役員報酬を月額80万円から100万円に上げたい

  • 期首に決めるのを忘れていたので、後からさかのぼって増額したい

  • 業績が悪化したので、役員報酬を下げたい

  • 税務調査で役員報酬の議事録を確認された


役員報酬は、従業員給与と違い、法人税上の損金算入に厳しいルールがあります。

特に中小企業で多いのが、「定期同額給与」のルールを理解せずに役員報酬を変更してしまい、一部が損金不算入になるケースです。


本日は、役員報酬のうち定期同額給与とは何か、どこまで変更が認められるのか、過去分をさかのぼって支給した場合の注意点について、税理士の視点からわかりやすく解説します。


役員給与は原則として自由に損金算入できない

会社が役員に報酬を支払った場合、会計上は役員報酬として費用処理します。


しかし、法人税では、役員給与の損金算入について厳しい制限があります。

国税庁は、法人が役員に対して支給する給与のうち、定期同額給与、事前確定届出給与、一定の業績連動給与のいずれにも該当しないものは、原則として損金算入できないと説明しています。また、これらに該当する場合でも、不相当に高額な部分は損金算入できません。


つまり、役員報酬は「払ったから経費になる」というものではありません。

特に中小企業では、役員給与の多くが「定期同額給与」として損金算入されます。

そのため、役員報酬を変更するときは、まず定期同額給与の要件を確認する必要があります。


定期同額給与とは

定期同額給与とは、簡単にいうと、毎月など一定の時期に同じ金額で支給される役員給与です。たとえば、社長に毎月80万円を支給する、取締役に毎月50万円を支給する、といった形です。


国税庁は、定期同額給与について、その支給時期が1か月以下の一定期間ごとであり、各支給時期における支給額が同額である給与などを指すと説明しています。


定期同額給与の趣旨は、役員報酬を使った利益調整を防ぐことにあります。

たとえば、利益が出そうだから期末に役員報酬を増やす、赤字になりそうだから途中で役員報酬を下げる、といったことを自由に認めると、法人税の課税所得を恣意的に調整できてしまいます。


そのため、役員報酬は原則として、事業年度を通じて毎月同額であることが求められます。


期首から3か月以内の改定は認められる

定期同額給与であっても、事業年度中に一切変更できないわけではありません。

代表的に認められるのが、事業年度開始の日から3か月以内に行なう通常改定です。


たとえば、3月決算の会社であれば、4月から新事業年度が始まります。

この場合、通常は6月末までに株主総会や取締役会などで役員報酬の改定を決議し、その後、改定後の金額を毎月同額で支給することで、定期同額給与として取り扱われます。


この3か月以内の改定は、役員報酬の年1回の見直しとして実務上よく使われます。

中小企業では、決算が確定した後、定時株主総会で役員報酬を改定するケースが多いです。

この場合、改定後の金額がその後の各月で同額に支給されていれば、原則として定期同額給与の範囲内と考えられます。


過去分をさかのぼって増額すると危険

役員報酬の変更で特に注意したいのが、過去分をさかのぼって増額するケースです。

たとえば、3月決算の会社で、4月から社長の役員報酬を月額80万円で支給していたとします。


その後、5月の定時株主総会で「社長の役員報酬を月額100万円にする」と決議したとします。


5月以降の支給額を毎月100万円に変更するのであれば、通常改定として整理できる可能性があります。


しかし、問題は「4月分も本来100万円だったことにして、4月分の差額20万円を5月に追加支給する」ようなケースです。


このような過去分の遡及支給は、定期同額給与として認められない可能性があります。

定期同額給与は、あくまで一定期間ごとに同額で支給されることが前提です。

後から「実は先月分も増額していました」と処理すると、利益調整と見られるリスクがあります。


「4月から100万円だった」と言える資料があるか

過去分の遡及支給が問題になるかどうかは、形式だけでなく、実態と資料の整備状況も重要です。


たとえば、4月の時点で既に役員報酬を月額100万円にする決議があり、その支給が単なる事務処理の都合で遅れただけであれば、説明できる余地があります。


一方、5月になって初めて月額100万円への改定を決議し、その決議を4月にさかのぼって適用したような場合には、4月分の増額部分は定期同額給与とは言いにくくなります。

実務で確認すべき資料は、次のようなものです。

  • 株主総会議事録

  • 取締役会議事録

  • 役員報酬改定の決議日

  • 改定後の支給開始月

  • 給与台帳

  • 振込記録

  • 未払金計上の有無

  • 会計処理のタイミング

  • 源泉所得税の処理


税務調査では、「いつ決めたのか」「いつから支給することにしたのか」「実際にどう支給したのか」が確認されます。


議事録だけでなく、給与台帳や振込記録との整合性も重要です。


期中改定が認められるケース

役員報酬は、期首から3か月以内の通常改定以外にも、一定の場合には期中改定が認められることがあります。代表的なのは、次のようなケースです。

  • 臨時改定事由による改定。

  • 業績悪化改定事由による減額改定。


臨時改定事由とは、役員の職制上の地位の変更、職務内容の重大な変更など、やむを得ない事情により役員給与を変更する必要がある場合です。


たとえば、平取締役が代表取締役に就任した、非常勤役員が常勤役員になった、合併や組織再編により職務内容が大きく変わった、といったケースが考えられます。


国税庁も、3か月経過後には予測しがたい偶発的な事情等により役員給与を改定する場合で、利益調整等の恣意性がないものについて、定期同額給与として取り扱う考え方を示しています。


ただし、「仕事が少し増えた」「何となく報酬を上げたい」といった理由では、臨時改定事由として認められにくいです。


業績悪化による減額改定

業績が悪化した場合には、役員報酬の減額改定が認められることがあります。


たとえば、資金繰りが急激に悪化した、金融機関や取引先との関係上、役員報酬を下げざるを得ない、経営状況が著しく悪化した、といったケースです。


ただし、単に「利益が予想より少なかった」「節税のために下げたい」という程度では、業績悪化改定事由として認められにくいです。


役員報酬の減額が認められるには、経営状況の著しい悪化や、それに類するやむを得ない事情が必要です。


また、減額改定を行なう場合にも、議事録や資金繰り表、金融機関との協議資料、業績資料など、改定理由を説明できる資料を残しておくことが重要です。


臨時改定と通常改定を混同しない

実務では、「期中でも理由があれば変更できる」と誤解されることがあります。


しかし、期中改定が認められるのは限定的です。

通常改定は、事業年度開始の日から3か月以内に行なう定例的な見直しです。


一方、臨時改定は、役員の職務内容や地位に大きな変更があった場合など、通常改定とは別の事情が必要です。


たとえば、次のようなケースは慎重な判断が必要です。

  • 売上が伸びたので社長の報酬を上げたい

  • 予定より利益が出そうなので役員報酬を増やしたい

  • 役員のモチベーション維持のために期中で増額したい

  • 節税のために期末近くで増額したい


これらは、原則として臨時改定事由とは言いにくいです。

期中に役員報酬を増額した場合、増額部分が損金不算入になる可能性があります。


定期同額給与に該当しない部分はどうなるか

定期同額給与に該当しない役員給与がある場合、その全額が損金不算入になるとは限りません。一般的には、定期同額給与として認められる部分と、認められない部分を区分して考えます。


たとえば、月額80万円の役員報酬を継続して支給していた会社が、期中から月額100万円に増額したものの、その増額が定期同額給与として認められない場合、増額部分20万円が損金不算入になる可能性があります。


ただし、実際の判定は、支給時期、決議内容、会計処理、改定理由などにより異なります。

税務調査で問題になった場合には、どの部分が定期同額給与として認められ、どの部分が損金不算入になるのかを具体的に整理する必要があります。


未払計上すればよいわけではない

役員報酬について、「決算で未払計上しておけば大丈夫」と考える方もいます。

しかし、定期同額給与の判定では、単に会計上未払計上しているかどうかだけでは不十分です。


重要なのは、役員報酬の支給額があらかじめ定められていたか、支給時期ごとの金額が同額であるか、改定が認められるタイミング・理由に該当するかです。


たとえば、期末に利益が出たため、過去分の役員報酬を増額したことにして未払金を計上するような処理は、損金算入が認められない可能性が高いです。


役員報酬の未払計上は、実際に支給義務が確定していること、支給額が適正に決議されていること、継続的な支給実態があることが前提です。


議事録の整備は必須

役員報酬を変更する場合には、議事録の整備が非常に重要です。

中小企業では、役員報酬を口頭で決めているケースもあります。

しかし、税務調査では、役員報酬の改定時期や改定理由を確認するために、株主総会議事録や取締役会議事録の提示を求められることがあります。

議事録には、少なくとも次の点を明確に記載しておきましょう。

  • 開催日

  • 出席者

  • 決議内容

  • 改定対象となる役員

  • 改定前の報酬額

  • 改定後の報酬額

  • 改定後の支給開始時期

  • 改定理由


特に重要なのは、支給開始時期です。

「月額100万円に改定する」とだけ書いてあると、いつから適用するのかが不明確になります。「令和○年○月支給分から月額100万円とする」など、具体的に記載しておくとよいでしょう。


決算前の打ち合わせで確認したいポイント

役員報酬は、決算が近づいてから慌てて変更しようとしても、税務上認められないことが多いです。

そのため、決算前だけでなく、事業年度開始直後の段階で確認しておくことが重要です。

特に次の点を確認しましょう。

  • 今期の役員報酬をいつ決議したか

  • 決議後の支給額が毎月同額になっているか

  • 議事録と給与台帳が一致しているか

  • 途中で増額・減額していないか

  • 期中改定がある場合、臨時改定事由や業績悪化改定事由を説明できるか

  • 役員ごとの職務内容に見合った金額か

  • 不相当に高額な報酬になっていないか

  • 源泉所得税や社会保険の処理と整合しているか


役員報酬は、法人税だけでなく、所得税、住民税、社会保険料にも影響します。

節税目的だけでなく、会社の資金繰りや役員個人の税負担も含めて検討する必要があります。


まとめ:定期同額給与は「いつ決めたか」と「いつから支給したか」が重要

役員報酬を損金算入するには、法人税上のルールを満たす必要があります。


中小企業で最もよく使われるのが、毎月同額で支給する定期同額給与です。

定期同額給与として認められるためには、原則として、毎月など1か月以下の一定期間ごとに同額で支給されていることが必要です。


また、事業年度開始の日から3か月以内の通常改定であれば、役員報酬を変更できる場合があります。


一方で、過去分をさかのぼって増額した場合には、定期同額給与として認められない可能性があります。


たとえば、5月に役員報酬を月額100万円へ改定したにもかかわらず、4月分との差額を後から追加支給した場合、その差額部分が損金不算入となるリスクがあります。


役員報酬を変更するときは、次の点を必ず確認しましょう。

  • 改定日はいつか

  • 決議日はいつか

  • 改定後の支給開始月はいつか

  • 議事録に明確に記載されているか

  • 給与台帳や振込記録と整合しているか

  • 臨時改定の場合、やむを得ない事情を説明できるか

  • 業績悪化による減額の場合、客観的な資料があるか

  • 役員報酬は、後から帳尻を合わせるのが難しい項目です


税務調査で指摘されないためには、事業年度開始時や定時株主総会のタイミングで、役員報酬の金額・改定時期・議事録を正確に整備しておくことが大切です。


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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

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