永年勤続表彰でカフェテリアプランのポイントを付与したら給与課税?旅行・観劇に使っても非課税にならないケースを税理士が解説
こんばんは!代表の安田です。
従業員の福利厚生制度として、カフェテリアプランを導入する会社が増えています。
カフェテリアプランとは、会社が従業員に一定のポイントを付与し、従業員がそのポイントを使って、会社の用意した福利厚生メニューの中から希望するサービスを選択できる制度です。
たとえば、健康診断、育児・介護支援、自己啓発、旅行、宿泊、スポーツクラブ、映画・観劇チケットなど、さまざまなメニューを用意するケースがあります。
このカフェテリアプランを、永年勤続表彰と組み合わせる会社もあります。
たとえば、勤続10年、20年、30年、40年に到達した従業員に対し、一定のポイントを付与し、旅行や観劇、健康増進、医療検診、自己啓発などに使えるようにする制度です。
ここで問題になるのが、源泉所得税の取扱いです。
永年勤続表彰では、一定要件を満たす旅行・観劇への招待や記念品の支給について、給与課税しなくてよい取扱いがあります。
では、永年勤続表彰としてカフェテリアプランのポイントを付与し、従業員がそのポイントを旅行や観劇に利用した場合も、非課税としてよいのでしょうか。
結論からいうと、従業員が旅行や観劇に利用した場合であっても、利用したポイント相当額は、原則としてポイント利用時の給与として課税対象になると考えられます。
本日は、永年勤続表彰に係る非課税取扱い、カフェテリアプランの通常の課税関係、永年勤続ポイントが給与課税される理由、制度設計上の注意点を解説します。
永年勤続表彰とは
永年勤続表彰とは、長年勤務している役員や従業員に対して、会社が感謝や慰労の趣旨で行う表彰制度です。
多くの会社では、勤続10年、20年、30年などの節目に、表彰状、記念品、旅行券、特別休暇などを付与しています。
永年勤続表彰は、従業員のモチベーション向上、定着率の向上、会社への貢献に対する謝意を示す制度として活用されています。
ただし、会社が従業員に経済的利益を与える以上、所得税の給与課税が問題になります。
現金で支給すれば、原則として給与です。
商品券や自由に使えるポイントを支給する場合も、実質的に金銭に近い利益として給与課税の対象になる可能性があります。
一方、一定の永年勤続表彰については、社会通念上相当な範囲であれば非課税とされる取扱いがあります。
永年勤続者への記念品等が非課税となる要件
使用者が永年勤続した役員または従業員を表彰するに当たり、その記念として旅行、観劇等に招待したり、記念品を支給したりする場合には、一定要件を満たせば給与課税しなくてよいとされています。
主な要件は次の3つです。
1つ目は、その人の勤続年数や地位などに照らして、社会一般的にみて相当な金額以内であることです。
2つ目は、勤続年数がおおむね10年以上である人を対象としていることです。
3つ目は、同じ人を2回以上表彰する場合には、前に表彰した時からおおむね5年以上の間隔が空いていることです。
たとえば、勤続10年や20年の節目に、社会通念上相当な旅行へ招待する、または記念品を支給するような場合には、非課税として処理できる可能性があります。
ただし、現金や商品券の支給、本人が自由に記念品を選択できる仕組みには注意が必要です。
現金・商品券・自由選択型は給与課税されやすい
永年勤続表彰であっても、現金を支給する場合は給与として課税されます。
また、商品券を支給する場合も、券面額が給与として課税されます。
さらに、本人が自由に記念品を選択できる場合にも、その記念品の価額が給与として課税されるとされています。
これは、従業員が自分の希望に応じて経済的利益を選べる場合、会社が特定の記念品や旅行を提供したというより、従業員に金銭に近い選択可能な利益を与えたと評価されやすいためです。
永年勤続表彰の非課税取扱いは、あくまで会社が表彰の記念として旅行や観劇へ招待する、または記念品を支給する場面を想定しています。
従業員が幅広いメニューから自由に選ぶ制度とは相性が悪い点に注意が必要です。
カフェテリアプランとは
カフェテリアプランとは、従業員が会社から付与されたポイントを使い、複数の福利厚生メニューの中からサービスを選べる制度です。
通常のカフェテリアプランでは、全従業員に毎年一定ポイントを付与し、従業員は自分のライフスタイルやニーズに応じてメニューを選択します。
たとえば、次のようなメニューがあります。
健康診断や人間ドック
育児支援
介護支援
自己啓発
スポーツクラブ
旅行補助
映画
観劇チケット
食事補助
住宅関連サービス
カフェテリアプランは、従業員ごとのニーズに柔軟に対応できる点がメリットです。
しかし、税務上は、メニューごとに課税・非課税の判断が異なるため、制度設計と運用管理が重要になります。
通常のカフェテリアプランは利用時に課税・非課税を判断する
通常のカフェテリアプランについて、国税庁は、従業員に付与されるポイントの経済的利益について、原則としてポイント付与時ではなく、従業員がそのポイントを利用してサービスを受けた時に、そのサービス内容に応じて課税・非課税を判断するとしています。
これは、カフェテリアプランのメニューの中に、課税扱いとなるものと非課税扱いとなるものが混在しているためです。
また、各メニューは一定の要件に該当しなければサービスを受けられず、ポイントを使わなかったからといって金銭が支給されるものではないことも理由とされています。
たとえば、健康診断など一定の福利厚生として非課税になり得るメニューに使った場合は非課税となる可能性があります。
一方、個人的な娯楽性の強いサービスや、給与に近い経済的利益と評価されるメニューに使った場合は、給与課税の対象になることがあります。
カフェテリアプランが非課税福利厚生となるための条件
通常のカフェテリアプランで非課税福利厚生として扱うには、一定の前提が必要です。
特に重要なのは、役員・従業員にとって均等な制度であることです。
たとえば、職務上の地位や報酬額に比例してポイントが付与される場合には、福利厚生というより給与の一部と評価されやすくなります。
この場合、カフェテリアプラン全体が課税対象になる可能性があります。
また、ポイントに換金性がないことも重要です。
ポイントを現金に交換できる、未使用ポイントを現金精算できる、退職時に残ポイントを買い取る、といった制度であれば、経済的利益が金銭と同視されやすくなります。
そのため、通常のカフェテリアプランでは、全従業員に一定基準で公平にポイントを付与し、現金への交換は認めず、メニューごとに課税・非課税を判定する運用が基本になります。
永年勤続ポイントの制度例
ある会社が新たに導入を検討している永年勤続ポイントの例を考えてみましょう。
制度の内容は、おおむね次のとおりです。
勤続10年、20年、40年到達時にそれぞれ50,000ポイントを付与
勤続30年到達時に100,000ポイントを付与
最大250,000ポイント、250,000円相当
趣旨は永年勤続を機会とした心身のリフレッシュ支援
対象メニューは旅行、観劇等のチケット購入、健康増進、医療検診、不妊治療、自己啓発
各勤続年数到達直後の4月1日に付与
使用期限は退職時・現金への交換は不可
一見すると、永年勤続表彰の要件に近い部分があります。
勤続10年以上を対象としており、表彰の間隔も10年ごとです。
金額も、勤続年数に照らして直ちに社会通念上不相当とはいえない可能性があります。
それでも、この制度では、ポイントを旅行や観劇に使った場合を含め、利用したポイント相当額が給与課税の対象になると考えられます。
なぜ旅行・観劇に使っても非課税にならないのか
永年勤続表彰の非課税取扱いでは、使用者が永年勤続者を旅行や観劇等へ「招待」することが前提です。
また、旅行券について非課税が認められる取扱いもありますが、これは一定期間内に旅行を実施し、旅行先等を確認できる報告書や資料を会社に提出するなど、実質的に会社が旅行に招待したものと同視できる場合です。
一方、永年勤続ポイントの場合、従業員は旅行や観劇だけでなく、健康増進、医療検診、不妊治療、自己啓発など、複数メニューから自由に選択できます。
さらに、選択時期も永年勤続表彰のタイミングに限定されず、使用期限は退職時までとされています。
このような制度では、会社が特定の旅行や観劇に招待したとはいえません。
従業員に幅広い選択肢を与え、後日、本人の意思でサービスを選ばせている制度と評価されます。
そのため、永年勤続表彰の旅行・観劇等の非課税取扱いをそのまま適用することは難しいと考えられます。
ポイント利用時の給与として課税する
永年勤続ポイントについては、ポイントを付与した時点ではなく、従業員がポイントを利用してサービスを受けた時点で給与課税するのが基本と考えられます。
課税対象となる金額は、利用したポイントに相当する金額です。
たとえば、勤続20年到達時に50,000ポイントを付与し、従業員がそのうち30,000ポイントを旅行に利用した場合、30,000円相当がポイント利用時の給与として課税対象になります。
残り20,000ポイントを翌年以降に自己啓発メニューへ利用した場合、その利用時に20,000円相当が給与課税されます。
未使用のまま退職し、ポイントが失効した場合には、実際に経済的利益を受けていないため、その未使用部分について所得税の課税は生じないと考えられます。
旅行券の非課税取扱いとの違い
永年勤続表彰では、旅行券を支給する場合でも、一定要件を満たせば非課税として取り扱われることがあります。
たとえば、勤続25年や30年の節目に旅行券を支給し、支給後1年以内に旅行を実施し、旅行先等を確認できる資料を会社に提出するようなケースです。
この取扱いでは、旅行券という金券性のあるものを使っていますが、使用目的が旅行に限定され、実際に旅行を行ったことを会社が確認できるため、会社が旅行に招待したものと同視できると考えられます。
一方、永年勤続ポイントは、旅行に限定されていません。
観劇、健康増進、医療検診、不妊治療、自己啓発など、さまざまなメニューに使えます。
さらに、使用期限が退職時までと長く、永年勤続表彰の記念として直ちに旅行へ招待したとは言いにくい制度です。
したがって、旅行券の非課税取扱いと同様には扱えません。
使用期限が退職時までだと非課税扱いは難しい
永年勤続ポイントでは、使用期限が退職時までとされていることがあります。
この点も、非課税扱いを難しくする要因です。
永年勤続表彰として旅行や観劇へ招待する場合、その表彰の機会に、記念として提供されることが前提です。
旅行券の非課税取扱いでも、支給後一定期間内に旅行を実施し、報告書等で確認することが重視されています。
一方、ポイントを退職時まで自由に使える制度では、勤続10年到達時に付与されたポイントを、何年も後に別の目的で利用することができます。
これでは、永年勤続表彰の記念として会社が旅行や観劇に招待したものとは説明しにくくなります。長期利用可能なポイントは、従業員に将来使える経済的価値を付与している側面が強くなります。
医療検診や不妊治療に使った場合はどうなるか
永年勤続ポイントの対象メニューには、医療検診や不妊治療などが含まれることがあります。
通常の福利厚生制度であれば、健康診断や人間ドックの費用補助が一定要件のもと非課税とされることがあります。
しかし、この永年勤続ポイントについては、従業員がいずれのメニューを選択したとしても、利用したポイント相当額は給与課税の対象になるとされています。
これは、制度全体が永年勤続時に付与される選択型ポイントであり、永年勤続表彰の旅行・観劇等の非課税取扱いとは異なるためです。
つまり、メニューの中に本来は非課税になり得るものが含まれていても、永年勤続ポイントとして付与され、従業員が幅広い選択肢から自由に利用する制度である以上、利用ポイント相当額を給与として課税する整理になります。
実務上は、メニューごとに非課税判定する通常のカフェテリアプランと、永年勤続表彰として特別に付与するポイントを分けて管理する必要があります。
源泉徴収のタイミング
永年勤続ポイントを給与課税する場合、源泉徴収のタイミングは、従業員がポイントを利用した時です。
ポイント付与時には、まだ従業員がどのサービスを受けるか確定しておらず、実際の経済的利益も発生していないと考えられます。
そのため、利用時に、その利用ポイント相当額を給与として処理します。
実務では、福利厚生アウトソーシング会社から、従業員ごとの利用明細を受け取り、給与計算に反映する必要があります。
たとえば、毎月末または四半期ごとに、従業員別のポイント利用額を集計し、その月の給与に経済的利益として加算して源泉徴収する運用が考えられます。
源泉徴収漏れを防ぐには、ポイント利用データと給与計算システムの連携が重要です。
年末調整への影響
永年勤続ポイントの利用額を給与課税する場合、その金額は給与収入に含まれます。
そのため、年末調整の対象となります。
たとえば、従業員がその年に永年勤続ポイントを100,000円分利用した場合、給与明細上は現金支給されていなくても、給与課税対象の経済的利益として給与収入に含める必要があります。
これにより、源泉徴収税額、社会保険料の取扱い、住民税の給与支払報告書、源泉徴収票の支払金額などにも影響する可能性があります。
税務処理を誤ると、会社側の源泉徴収漏れや、従業員の年末調整誤りにつながります。
ポイント利用額を給与計算に反映するフローを、制度導入前に整備しておきましょう。
未使用ポイントが失効した場合
永年勤続ポイントについて、退職までに利用しなかったポイントがある場合、その未使用部分はどうなるのでしょうか。
退職によりポイントを利用しなかった場合には、所得税の課税は生じないと考えられます。
これは、従業員が実際にサービスを受けておらず、経済的利益を享受していないためです。
ただし、未使用ポイントを退職時に現金で精算する、商品券で支給する、退職金に上乗せするなどの取扱いをすれば、その時点で課税関係が生じます。
現金精算を認めると、カフェテリアプラン全体の換金性にも影響する可能性があります。
そのため、制度上は現金への交換を認めず、未使用ポイントは失効する設計にしておくことが重要です。
ポイントに換金性を持たせない
カフェテリアプランの税務では、ポイントに換金性がないことが重要です。
ポイントを現金に交換できる制度や、未使用ポイントを現金で払い戻す制度は、給与課税のリスクが高くなります。
永年勤続ポイントでも同じです。
現金への交換不可とするだけでなく、次のような運用も避けるべきです。
退職時に未使用ポイントを買い取る
ポイントを商品券や電子マネーに交換できる
ポイントを家族や第三者に譲渡できる
ポイントを報酬や賞与の代替として付与する
ポイント残高に応じて現金補償を行う
換金性があると、ポイント付与時または利用時に給与課税が問題になるだけでなく、福利厚生制度全体が給与性の強いものと見られる可能性があります。
全従業員対象の通常ポイントとの違い
通常のカフェテリアプランでは、全従業員に一定ポイントを付与し、利用時にメニュー内容に応じて課税・非課税を判断する取扱いが認められています。
一方、永年勤続ポイントは、特定の勤続年数に到達した従業員にだけ付与される特別ポイントです。
この点で、通常ポイントとは性質が異なります。
永年勤続ポイントは、勤続年数という条件に応じて付与されるため、永年勤続表彰の一環ではありますが、従業員が自由にメニューを選べるポイントである以上、旅行・観劇への招待や記念品支給とは異なります。
したがって、通常ポイントと永年勤続ポイントを同じ税務処理で扱うのは危険です。
制度設計上も、通常付与ポイント、永年勤続ポイント、会社負担の健康診断、出張旅費、研修費などを区分して管理する必要があります。
永年勤続表彰を非課税にしたい場合の制度設計
会社として、永年勤続表彰を非課税で実施したいのであれば、カフェテリアプランの自由選択型ポイントではなく、永年勤続表彰の非課税要件に沿った制度設計を検討すべきです。
たとえば、次のような設計です。
会社が旅行または観劇へ招待する
会社が社会通念上相当な記念品を選定して支給する
現金や商品券では支給しない
従業員が自由に幅広い商品やサービスを選べる仕組みにしない
勤続10年以上を対象とする
2回以上表彰する場合はおおむね5年以上の間隔を空ける
旅行券を使う場合は、一定期間内に旅行を実施させ、報告書や資料を提出させる
未使用分を現金精算しない
非課税にしたい場合は、従業員の自由度を高めすぎないことがポイントです。
自由度が高いほど、会社からの招待や記念品というより、選択可能な経済的利益と評価されやすくなります。
旅行券を使う場合の注意点
永年勤続表彰で旅行券を支給する場合には、一定の取扱いにより非課税となる可能性があります。
ただし、単に旅行券を渡せばよいわけではありません。
非課税扱いを受けるには、旅行券の金額が勤続年数等に照らして相当であること、旅行の実施が支給後一定期間内であること、旅行先等を確認できる資料を会社に提出させることなどが重要です。
旅行券を現金化できる、旅行以外に自由に使える、未使用分を払い戻せるといった場合には、給与課税のリスクがあります。
また、従業員が旅行券を使わずに他の商品に交換できる場合も注意が必要です。
永年勤続表彰として非課税処理したいのであれば、旅行の実施確認まで含めた運用設計が必要です。
経理・人事で共有したい実務フロー
永年勤続ポイントを導入する場合、経理部門と人事部門で次のようなフローを共有しておきましょう。
まず、人事部門が対象者と付与ポイント数を管理します。
次に、福利厚生アウトソーシング会社から、従業員別のポイント利用明細を定期的に取得します。その利用明細をもとに、課税対象となるポイント利用額を給与計算へ反映します。
給与計算では、利用ポイント相当額を経済的利益として給与に加算し、源泉所得税を計算します。
年末調整では、その年の利用ポイント相当額を給与収入に含めます。
退職時には、未使用ポイントを現金精算せず失効処理し、利用済みポイントについて課税漏れがないか確認します。
このフローを整備しないまま制度を導入すると、福利厚生制度としては便利でも、源泉徴収漏れが発生しやすくなります。
就業規則・福利厚生規程に記載したい内容
永年勤続ポイント制度を導入する場合、就業規則や福利厚生規程、カフェテリアプラン規程に次の事項を明記しておくとよいでしょう。
制度の目的
対象者
付与時期
付与ポイント数
利用可能メニュー
利用期限
現金交換不可であること
退職時の未使用ポイントの取扱い
ポイントの譲渡禁止
税務上、利用時に給与課税される場合があること
会社が源泉徴収を行なうこと
利用明細を給与計算に反映すること
従業員にとっては、ポイント利用後に給与課税されることが分かりにくい場合があります。
制度導入時に、利用ポイント相当額が給与課税される可能性を明確に説明しておくことが重要です。
従業員への説明も重要
永年勤続ポイントは、従業員にとって魅力的な福利厚生制度です。
しかし、利用時に給与課税されることを説明していないと、後で「ポイントなのに税金がかかるのか」と不満が出る可能性があります。
従業員向けの説明では、次の点を伝えておきましょう。
ポイント付与時ではなく利用時に課税されること
利用したポイント相当額が給与として扱われること
給与明細に経済的利益として反映されること
源泉所得税や住民税に影響する可能性があること
未使用ポイントが失効した場合には、その未使用分には課税されないこと
現金交換はできないこと
福利厚生制度は、従業員に喜ばれることが目的です。
税務上の取扱いを事前に説明し、利用時の誤解を避けることが大切です。
税務調査で確認されやすいポイント
永年勤続ポイント制度は、税務調査でも確認される可能性があります。
特に、次のような点が見られます。
ポイントの付与基準
ポイントに換金性がないか
利用可能メニューの内容
ポイント利用時に給与課税しているか
通常のカフェテリアプランと永年勤続ポイントを区分しているか
旅行や観劇に使った場合に非課税処理していないか
退職時に未使用ポイントを現金精算していないか
福利厚生規程や人事規程の内容
アウトソーシング会社からの利用明細
給与計算への反映状況
特に、旅行や観劇メニューを利用した永年勤続ポイントについて非課税処理している場合には、永年勤続表彰の非課税取扱いの要件を満たしているか確認される可能性があります。
制度の自由度が高い場合には、非課税処理は慎重に判断しましょう。
よくある誤解
永年勤続ポイントと源泉所得税について、実務上よくある誤解を整理します。
まず、「永年勤続表彰だからすべて非課税」という誤解です。
永年勤続表彰でも、現金、商品券、自由選択型の記念品やポイントは給与課税されることがあります。
次に、「旅行や観劇に使えば非課税」という誤解です。
会社が旅行や観劇に招待した場合と、従業員が自由選択型ポイントを旅行や観劇に使った場合は異なります。
また、「通常のカフェテリアプランでは利用内容で判断するから、永年勤続ポイントもメニューごとに判断すればよい」という誤解もあります。
永年勤続ポイントについては、いずれのメニューを選択したとしても、利用ポイント相当額が給与課税の対象になると考えられます。
最後に、「現金交換できなければ必ず非課税」という誤解です。
換金性がないことは重要ですが、それだけで非課税になるわけではありません。
自由にサービスを選べる経済的利益であれば、給与課税される可能性があります。
実務上のチェックポイント
永年勤続ポイントを導入する場合は、次の点を確認しましょう。
永年勤続表彰の非課税要件を満たす制度か
会社が旅行や観劇に招待する制度か
従業員が自由にメニューを選択できる制度か
対象メニューが旅行や観劇に限定されているか
健康増進、医療検診、自己啓発など複数メニューがあるか
使用期限が表彰時から短期間か、退職時までか
ポイントに換金性がないか
未使用ポイントを現金精算しないか
利用時に給与課税するフローがあるか
福利厚生会社から利用明細を取得できるか
給与計算や年末調整へ反映できるか
従業員へ課税関係を説明しているか
制度導入前に、税務・人事・給与計算の3つの観点から確認しておくことが大切です。
まとめ
永年勤続表彰としてカフェテリアプランのポイントを付与する場合、従業員が旅行や観劇に利用したとしても、非課税とできるとは限りません。
勤続10年、20年、40年到達時にそれぞれ50,000ポイント、30年到達時に100,000ポイントを付与し、旅行、観劇、健康増進、医療検診、不妊治療、自己啓発などに利用できる永年勤続ポイントなどは、勤続10年以上を対象とし、表彰間隔も10年ごとで、金額も直ちに社会通念上不相当とはいえないように見えます。
しかし、従業員が旅行や観劇を選ぶか、医療検診など他のメニューを選ぶかを自由に決められること、使用期限が退職時までとされていることから、会社が永年勤続表彰の記念として旅行や観劇等に招待したものとはいえません。
そのため、所得税基本通達36-21の永年勤続者の旅行・観劇等の非課税取扱いは適用できないと考えられます。
結果として、従業員がいずれのメニューを選択した場合でも、利用したポイント相当額について、そのポイントを利用した時の給与として課税対象になります。
一方、退職によりポイントを利用しなかった場合には、実際に経済的利益を受けていないため、所得税の課税は生じないと考えられます。
永年勤続表彰を非課税で実施したい場合には、自由選択型ポイントではなく、会社が旅行や観劇に招待する、または社会通念上相当な記念品を支給する制度として設計することが重要です。
また、旅行券を利用する場合にも、一定期間内の旅行実施、旅行先等の報告、現金精算不可などの運用が必要になります。
永年勤続ポイントは従業員に喜ばれる制度ですが、源泉所得税の処理を誤ると、会社側の源泉徴収漏れにつながります。
制度導入前に、ポイント利用時の給与課税、利用明細の取得、給与計算への反映、従業員への説明を整備しておきましょう。
永年勤続表彰やカフェテリアプランの税務処理で迷う場合は、税理士へ相談することをおすすめします。
神戸での起業や開業に関するご相談、確定申告にお困りの方、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください!
<あわせて読みたい>
【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






コメント