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新リース会計基準で連結処理はどう変わる?グループ内リースの消去方法と実務ポイント

執筆者の写真: 安田亮
安田亮
10 分前
読了時間: 15分

こんにちは!代表の安田です。


新リース会計基準は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から強制適用されます。3月決算会社の場合、原則として2028年3月期からの適用です。


新基準では、借手はファイナンス・リースとオペレーティング・リースを区分せず、原則としてすべてのリースについて「使用権資産」と「リース負債」を貸借対照表に計上します。


そのため、これまで賃貸借処理されていたオフィス、店舗、倉庫、車両、設備などについても、借手側ではオンバランス処理が必要になる可能性があります。


新リース会計基準への対応では、契約の中にリースが含まれていないかを確認する「隠れリース」の洗い出しや、リース期間・割引率の見積りが注目されがちです。


しかし、連結財務諸表を作成する企業グループでは、もう一つ重要な論点があります。

それが、グループ会社間で行なわれるリース取引の内部取引消去です。


新基準では借手と貸手の会計処理が非対称になるため、従来よりも連結消去仕訳が複雑になります。単に受取リース料と支払リース料を相殺するだけでは、使用権資産、リース負債、リース投資資産、減価償却費、利息費用などが連結財務諸表に残ってしまう可能性があります。


本日は、新リース会計基準におけるグループ内リースの基本的な考え方、2つの連結消去方法、それぞれのメリット・デメリット、実務対応の進め方を公認会計士の視点から解説します。


新リース会計基準で借手と貸手の処理が非対称になる

従来のリース会計では、借手と貸手の双方が、リース取引を次の2つに分類していました。

  • ファイナンス・リース

  • オペレーティング・リース


オペレーティング・リースであれば、貸手は受取リース料を収益として計上し、借手は支払リース料を費用として計上します。


この場合、グループ内リースの連結処理は比較的シンプルでした。貸手の受取リース料と借手の支払リース料を相殺すれば、内部取引の損益を消去できたためです。


ところが、新リース会計基準では、借手は原則としてすべてのリースについて使用権資産とリース負債を計上します。


一方、貸手の会計処理は、引き続きファイナンス・リースとオペレーティング・リースに区分されます。


たとえば、親会社が保有する建物や機械を子会社に賃貸し、貸手である親会社がオペレーティング・リースとして処理するケースを考えます。


親会社は受取リース料を収益として計上しますが、子会社は次の処理を行ないます。

  • 使用権資産の計上

  • リース負債の計上

  • 使用権資産の減価償却

  • リース負債に係る利息費用の計上


つまり、同じグループ内取引でありながら、貸手側には受取リース料、借手側には資産・負債・減価償却費・利息費用が計上されます。


これが、グループ内リースの連結処理を複雑にする主な原因です。


連結上は「グループ内リースがなかった状態」に戻す

連結財務諸表では、企業グループ全体を一つの会社とみなします。


したがって、親会社と子会社の間で行われたリース取引は、グループ内部の取引にすぎません。連結上は、そのリース取引がなかったかのように内部取引を消去する必要があります。


たとえば、親会社が所有する機械を子会社が使用しているのであれば、連結財務諸表では次のように表示するのが基本です。

  • 親会社が取得した機械装置を固定資産として表示する

  • グループ全体として機械装置の減価償却費を計上する

  • 親子会社間の受取リース料・支払リース料は表示しない

  • 子会社が計上した使用権資産・リース負債は残さない

  • 親会社が計上したリース投資資産なども残さない


つまり、個別財務諸表に計上されたリース関連の資産・負債・損益を消去し、グループが資産を直接保有して利用している状態へ組み直します。


新リース会計基準の連結処理では、この最終的な姿から逆算して、必要な消去仕訳を設計することが重要です。


グループ内リースの消去方法は大きく2つ

グループ内リースの内部取引を消去する方法として、主に次の2つの方法があります。


<方法1>連結修正仕訳で直接消去する

1つ目は、貸手と借手が個別財務諸表で計上したリース関連項目を、連結修正仕訳で直接相殺する方法です。

この方法では、親会社の連結担当者が、貸手・借手双方の会計処理を把握し、連結上不要となる項目を一つずつ消去します。


貸手がオペレーティング・リースの場合には、主に次の項目が消去対象となります。

  • 貸手の受取リース料

  • 借手の使用権資産

  • 借手の使用権資産減価償却累計額

  • 借手の使用権資産減価償却費

  • 借手のリース負債

  • 借手の利息費用


貸手がファイナンス・リースの場合には、さらに次の項目も対象になります。

  • リース投資資産

  • 受取利息

  • 貸手が計上した売却損益


すべてを親会社側の連結修正仕訳で処理するため、子会社の連結パッケージに特別な修正欄を多く設けずに済む点はメリットです。


一方、親会社はグループ内リースを網羅的に把握し、貸手側と借手側の残高を正確にひも付けなければなりません。


リース契約件数が多い企業グループでは、連結担当者の負担が大きくなる可能性があります。


<方法2>個別修正で賃貸借処理に戻してから消去する

2つ目は、借手が計上した使用権資産やリース負債などを、連結パッケージ上の個別修正仕訳でいったん取り崩す方法です。


借手側の処理を従来の賃貸借処理に戻し、支払リース料だけが計上された状態にします。そのうえで、連結上は貸手の受取リース料と借手の支払リース料を相殺します。


貸手がファイナンス・リースとして処理している場合には、貸手側についてもリース投資資産や受取利息、売却損益を取り崩し、資産を保有しながら賃貸している状態へ戻します。


この方法では、連結上の消去仕訳を従来に近い形にできるため、親会社の連結処理は比較的シンプルになります。個別修正仕訳で賃貸借処理に戻す方法の場合、親会社の連結修正仕訳や各社の連結パッケージを簡素化できます。


ただし、各子会社で正確な個別修正仕訳を作成しなければなりません。

子会社の経理体制が十分でない場合や、リース計算を本社で一元管理している場合には、かえって運用が難しくなる可能性があります。


2つの方法のメリット・デメリット

どちらの方法が常に優れているというわけではありません。

企業グループの管理体制やシステム、子会社の経理能力、リース契約件数などを踏まえて選択する必要があります。


<連結修正仕訳で直接消去する方法>

主なメリット

  • 親会社がグループ内リースを一元管理できる

  • 子会社側で複雑な修正仕訳を作成しなくてよい

  • 子会社による仕訳誤りのリスクを抑えやすい

  • リース管理システムを本社で一括運用している場合に適している

主なデメリット

  • 親会社の連結決算負担が大きい

  • 貸手・借手双方の残高を毎期照合する必要がある

  • 受取利息、利息費用、減価償却費などを細かくひも付けなければならない

  • ファイナンス・リースでは消去仕訳が特に複雑になる


<賃貸借処理に戻してから消去する方法>

主なメリット

  • 親会社の連結消去仕訳がシンプルになる

  • 受取リース料と支払リース料を相殺する従来型の処理に近づけられる

  • 子会社側に処理を分散できる

  • 連結決算の集中作業を軽減しやすい

主なデメリット

  • 各子会社で個別修正仕訳を作成する必要がある

  • 子会社の担当者に新リース会計基準の知識が必要になる

  • 子会社ごとに処理方法がばらつくリスクがある

  • 連結パッケージの入力ルールやチェック体制の整備が必要になる


グループ会社数が多く、各社に一定の経理能力がある場合には、個別修正で負荷を分散する方法が実務的です。


一方、本社がリース契約や計算データを集中管理しており、子会社側では詳細な計算を行っていない場合には、親会社が直接連結消去する方法の方が合理的なこともあります。

重要なのは、どこで複雑性を吸収するのかをグループ全体で決めることです。


貸手がオペレーティング・リースの場合

貸手がオペレーティング・リースとして処理している場合、貸手の個別財務諸表には、原則として次の項目が計上されます。

  • リース対象資産

  • 対象資産の減価償却費

  • 受取リース料


一方、借手には次の項目が計上されます。

  • 使用権資産

  • リース負債

  • 使用権資産の減価償却費

  • リース負債に係る利息費用


連結上は、借手の使用権資産・リース負債等を消去し、貸手が保有する元の資産とその減価償却費だけを残します。


このケースでは、貸手にリース投資資産が計上されていないため、ファイナンス・リースと比べると消去対象は少ないものの、借手のオンバランス処理を一式消去する必要があります。


貸手がファイナンス・リースの場合

貸手がファイナンス・リースとして処理している場合には、連結処理がさらに複雑になります。


貸手は、対象資産の帳簿価額を取り崩し、リース投資資産を計上します。取引条件によっては、リース開始時に売却損益を計上し、リース期間中は受取利息を認識します。


借手も、使用権資産とリース負債を計上し、減価償却費と利息費用を認識します。

連結上は、次のような項目を整理しなければなりません。

  • 貸手のリース投資資産

  • 貸手の受取利息

  • 貸手の売却損益

  • 借手の使用権資産

  • 借手のリース負債

  • 借手の減価償却費

  • 借手の利息費用

  • 元の固定資産とその減価償却費


貸手・借手双方にオンバランス項目が存在するため、連結修正仕訳だけで直接消去する方法では、毎期の残高管理が煩雑になりやすい点に注意が必要です。


グループ内リースを把握するためのデータ整備

新リース会計基準への対応では、グループ内リースを契約単位でひも付けられる仕組みが欠かせません。


親会社が受取リース料を計上していても、借手である子会社側の契約番号や使用権資産とひも付かなければ、正確な連結消去は困難です。


最低限、次の情報を共通管理する必要があります。

  • 貸手会社名

  • 借手会社名

  • 契約番号

  • リース対象資産

  • リース開始日

  • リース終了日

  • リース期間

  • 年間・月間リース料

  • 貸手のリース区分

  • 使用権資産の期首・期末残高

  • リース負債の期首・期末残高

  • リース投資資産の期首・期末残高

  • 減価償却費

  • 利息費用・受取利息

  • リース開始時の売却損益

  • 連結消去方法


契約番号や共通の取引IDを設け、貸手データと借手データを自動または半自動で突合できる状態を目指す必要があります。


連結パッケージの見直しが必要

新リース会計基準の適用にあたっては、連結パッケージにもグループ内リース専用の報告項目を追加することが考えられます。


たとえば、子会社に次の情報を報告させる方法があります。

  • グループ内の使用権資産残高

  • グループ内のリース負債残高

  • グループ内リースの減価償却費

  • グループ内リースの利息費用

  • グループ内リース料

  • 個別修正仕訳の内容

  • 相手先会社コード

  • 契約番号・取引ID


賃貸借処理に戻してから消去する方法を採用する場合には、子会社が入力する個別修正仕訳のフォーマットも統一しなければなりません。


入力項目を増やしすぎると子会社の負担が大きくなるため、親会社側で必要な情報と、子会社側で現実的に作成できる情報のバランスを取ることが重要です。


サブリースや転貸取引にも注意

実際の企業グループでは、親会社が保有する資産を子会社へ直接貸すだけとは限りません。

外部から借りた資産をグループ会社へ転貸し、さらに別のグループ会社や外部企業へ再転貸するようなケースもあります。


たとえば、次のような取引が考えられます。

  • 親会社が外部から借りたオフィスを子会社へ転貸する

  • 不動産管理子会社が一括賃借し、各事業会社へ転貸する

  • グループ会社間で設備を転貸し、最終的に外部顧客が使用する

  • 複数のグループ会社を経由してリースが連鎖する

  • 外部リースとグループ内リースが一つの契約に混在する


このような場合でも、連結処理の基本は変わりません。

連結財務諸表には、グループ全体が外部と行なった取引だけを残し、グループ内の取引は消去します。


そのため、複雑なサブリースについては、取引の法的形式だけを見るのではなく、最終的にグループが外部に対してどのような資産・負債・損益を有しているのかを整理することが必要です。


税務上の処理とは分けて考える

新リース会計基準により会計上の処理が変わっても、税務上の取扱いが同じタイミングで同じように変わるとは限りません。


個別財務諸表で使用権資産・リース負債を計上した場合でも、法人税上は従来の賃貸借取引として処理される項目が生じる可能性があります。


また、グループ内リースの連結消去仕訳は、あくまで連結財務諸表上の処理です。個別法人の税務申告では、それぞれの法人が行った取引を前提に所得計算を行ないます。


したがって、次の3つを区別して管理する必要があります。

  • 個別財務諸表上のリース会計

  • 連結財務諸表上の内部取引消去

  • 各法人の税務処理


税効果会計についても、個別上の会計・税務差異と、連結消去によって生じる差異を分けて検討することが重要です。


新リース会計基準への実務対応チェックリスト

連結財務諸表を作成する企業グループは、次の順序で準備を進めるとよいでしょう。


1.グループ内リースを洗い出す

固定資産台帳、賃貸借契約書、関連当事者取引一覧、勘定科目明細などから、グループ会社間のリースを網羅的に抽出します。


2.貸手・借手をひも付ける

同じ契約について、貸手側と借手側で共通の契約番号や取引IDを設定します。


3.貸手のリース区分を確認する

貸手がオペレーティング・リースとして処理するか、ファイナンス・リースとして処理するかを確認します。


4.連結消去方法を決める

親会社が直接消去する方法と、個別修正で賃貸借処理に戻す方法のどちらを採用するか決定します。

契約ごとに方法を変えると運用が複雑になるため、原則的なグループ方針を定めることが望まれます。


5.連結パッケージを改訂する

グループ内リースに関する残高、損益、相手先、契約番号、修正仕訳を報告できるようにします。


6.システム対応を確認する

リース管理システムと連結会計システムの間で、必要なデータを連携できるか確認します。


7.子会社へ会計方針を周知する

契約の抽出方法、リース期間、割引率、グループ内リースの報告方法、個別修正仕訳の作成方法をマニュアル化します。


8.試行決算を行なう

強制適用前に、実際の契約を用いて使用権資産・リース負債の計算と連結消去仕訳を試算します。


9.監査法人と協議する

採用する連結消去方法、連結パッケージ、重要な判断、移行時の処理について、早めに監査法人と共有します。


公認会計士の視点から見た重要ポイント

新リース会計基準の連結対応では、仕訳の正しさだけでなく、処理フローの設計が重要です。


特に押さえたいポイントは次の3点です。

  • どこで複雑性を吸収するか決める

親会社で一括処理するのか、子会社側の個別修正で分散するのかを決めます。

親会社・子会社双方が中途半端に処理すると、二重消去や消去漏れが起こりやすくなります。


  • 契約単位のひも付けを徹底する

残高の合計額だけを照合しても、契約ごとの開始日、期間、利息、減価償却費が異なれば正確な消去はできません。

契約番号や共通IDによる管理が不可欠です。


  • 例外取引にも対応できる原則を決める

サブリースや転貸など、すべての取引パターンについて詳細な仕訳ルールを作るのは現実的ではありません。

「グループ外との取引だけを連結財務諸表に残す」という原則を共有し、例外取引もその原則に沿って整理できる体制を作ることが重要です。


まとめ

新リース会計基準では、借手が原則としてすべてのリースについて使用権資産とリース負債を計上します。


一方、貸手は引き続きオペレーティング・リースとファイナンス・リースを区分して処理します。


この借手・貸手間の非対称性により、グループ内リースの連結消去は従来より複雑になります。主な消去方法は、次の2つです。

  • 貸手・借手のリース関連項目を親会社の連結修正仕訳で直接消去する方法

  • 個別修正仕訳で賃貸借処理に戻したうえで、受取リース料と支払リース料を消去する方法


前者は親会社による一元管理に向いていますが、連結決算の負担が大きくなります。後者は親会社の連結仕訳を簡素化できますが、子会社側で正確な修正仕訳を作成する体制が必要です。


新リース会計基準への対応では、個別契約の判定だけでなく、次の事項を早期に検討する必要があります。

  • グループ内リースの網羅的な洗い出し

  • 貸手・借手データのひも付け

  • 連結消去方法の選択

  • 連結パッケージの改訂

  • リース管理・連結会計システムの対応

  • 子会社への会計方針の周知

  • サブリース等の複雑な取引への対応

  • 監査法人との事前協議


強制適用の直前に仕訳だけを検討するのではなく、グループ全体でどのような処理フローを採用し、どこで複雑性を吸収するのかを早めに設計しておくことが、円滑な制度対応につながります。



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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。


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